住宅予算の正解は?返済比率の決め方|HB-01

「年収に対して、どこまで借りるのが現実的なのか」「審査は通ったけれど、この返済額で生活が続くのか」。住宅予算の悩みは、物件探しより先に家計と向き合う場面で出てきます。手取り・返済比率・返済期間。この3つを揃えると、まず立てるべき“安全ライン”が見えてきます。

目 次

結論:月々の返済目安は手取りの20〜25%

住宅予算は「借りられる金額の上限」ではなく手取りの中で生活が続く返済額で判断します。金融機関は額面の30〜35%まで審査上は貸せますが、その枠一杯に近づけると生活費・教育費・貯蓄の余地がなくなるリスクが高いです。

【年収600万円の月額返済額】

  • 額面年収:600万円、月収:50万円
    • 金融機関審査上限:月15〜17.5万円(30%~35%)
  • 手取り額:約470万円 、月収:約39万円
    • 適正返済額:月10〜12.5万円(20%~25%)

これだけでも、家計に残るお金は月々約5万円ほどの差があります。この月5万円の差は、1年で約60万円の余裕に直結します。余裕がある状態なら、車検(10〜15万円)、家電の買い替え(8〜12万円)、住宅の小修繕(10〜30万円)といった、年に数回発生する出費を家計の中で吸収できます。
一方で、返済額が月15万円側に寄ると、これらの支出が積み上がった瞬間に資金繰りが止まり、教育費の一時中断・修繕の先送り・カードリボ化といった行動が起きやすくなります。数字が示すのは、“返せる額”と“暮らせる額”の分岐点です。
さらに2025年から2026年にかけては金利上昇局面に入っているため、変動金利であっても今後0.5〜1.0%の上昇を想定して予算を組む必要があります。

金融機関と家計基準の差

金融機関の審査基準:額面収入の30〜35%
 (フラット35も同様)
FP推奨の理想値:手取り収入の20〜25%
・手取りは年収の約78%(社会保険料・税金など)

同じ年収でも基準が変わると、残せる現金と暮らしの余力がまったく別物になります。

比較シミュレーション

【調査データ/4人家族・住居費を除く平均生活費】

  • 総額:約32.6万円/月
    • 食費:8.5万円
    • 水道光熱費:2.3万円
    • 教育費:1.8〜2.3万円
    • 通信費:5.6万円
    • その他(保険、交際費、貯蓄など):約12〜14万円

この平均生活費に住宅ローンを追加した場合、金融機関基準とFP推奨値のはどのくらい差が出るのか。年収600万円を例に比較します。

条件(月額)返済額総負担額
金融機関:30%15万円47.6万円
FP推奨値:25%9.8万円42.4万円
※総負担額 = 返済額 + 平均生活費32.6万円
※額面月収:50万円
※手取り月収:約39万円 = 額面の約78%(社会保険料・税金控除後)

実際、計算基準が違うのみで、手取り収入は変わらないため、総負担額を差し引くと、以下の差額が出ることがわかります。

  • 金融機関:39万円 – 47.6万円 = ▲8.6万円
  • FP推奨値:39万 – 42.4万円 = ▲3.4万円

平均値を利用しているため、計算の都合上、赤字となりますが、▲3.4万円の不足なら、通信費や保険の見直し、固定費の微調整で年間で約40万円を作れる現実的な範囲です。しかし、▲8.6万円の不足は、年間で約100万円の資金不足となり、生活費を切る判断が避けられなくなります。具体的には、子どもの習い事の縮小、修繕費の後回し、車検費用の先送りなど、暮らしの質に影響する決断へ直結します。

年収別比較表

年収が同じでも、返済基準の置き方で月々の支払額は変わります。下の表は、審査基準(額面)と生活基準(手取り)で見たときの返済額の違いを年収別に並べたものです。

【金融機関基準 vs FP推奨値】

年収金融機関FP推奨値差額
400万円10〜11.7万円5.2〜6.5万円5万円前後
500万円12.5〜14.6万円6.5〜8.1万円6万円前後
600万円15〜17.5万円7.8〜9.75万円7.5万円前後
700万円17.5〜20.4万円9.1〜11.4万円9万円前後
800万円20〜23.3万円10.4〜13万円10万円前後
1,000万円25〜29.2万円13〜16.25万円12.5万円前後
 ※金融機関 = 額面の30〜35%、FP推奨値 = 手取りの20〜25%で計算

ここで出ている差額は、毎月の家計だけでなく、選べる物件価格や貯蓄ペースにもそのままつながります。毎月の返済に5〜7万円の差があれば、10年で600〜800万円分、将来の教育費や老後資金に回せる金額が変わってきます。どの返済ラインを選ぶかで、現実的に維持できる暮らしの形が分かれます。

“借りられる額”と“暮らしが続く額”を考える

借りられる額:年収の5〜7倍
暮らしが続く額:年収の5倍以内
返済期間の目安:25〜30年

金融機関が示す「貸せる額」は、あくまで審査上問題ない金額です。年収の5~7倍といわれています。これには、暮らしの余裕や将来の家計変動までは計算されていません。一方で、FPが示す「借りても安心な額」は、年収の5倍以内を推奨しています。このラインを超えると生活が苦しくなるため避けるべきという家計基準です。

年収別“借りられる額”と“適正額”参考表】

年収金融機関適正額
400万円2,000〜2,800万円2,000万円以内
500万円2,500〜3,500万円2,500万円以内
600万円3,000〜4,200万円3,000万円以内
700万円3,500〜4,900万円3,500万円以内
800万円4,000〜5,600万円4,000万円以内
1,000万円5,000~7,000万円5,000万円以内

年収の5倍以内に借入額を収める理由は、返済期間を30年前後で止められる範囲だからです。
例えば、年収600万円で3,000万円(5倍)を30年返済・金利1%で置くと月返済は約9.6万円。手取り39万円に対して約25%で収まります。これが3,500万円(約6倍)に上がると、30年では25%を超えるため、35年に伸ばさないと月額が入らないラインになります。
35年返済は月額を抑えられる一方、利息負担は30年返済より約150〜250万円増えるケースが一般的です(3,000万円借入・変動金利前提)。30年で組んでおき、家計にゆとりが出た時期に年1回10〜20万円の繰上返済を入れると、総返済額と期間の両方を縮められます。
返済期間は“長くしてでも買う”ではなく、30年を基準に置いて、35年を非常時の余白とするイメージが現実的です。はじめに返済額を低めに置き、家計が整った段階で前倒しする方が、生活と返済の両立に向きます。

頭金と諸費用の考え方

本格的な頭金の話は別の記事で解説しますが、ここでは最低限だけ伝えます。

  • 諸費用(物件価格の7〜10%)は現金で準備するのが必要があります。
  • 頭金ゼロで購入することは可能ですが、その後の生活が苦しくなるケースが非常に多いです。
  • 諸費用ローンを使うと、家計の負担が一気に重くなるルートに入ってしまいます。

金利上昇局面で気をつけること

変動金利:0.3〜0.7% (今後上昇リスク)
固定金利:1.8〜2.2%(直近で上昇傾向)
日銀政策金利:0.75%(2025年12月時点)

変動金利は現在0.5%前後で組んでいる人が多く、ここを起点に0.5%ずつ上がった場合の負担変化を確認します。いま支払えている額が基準ではなく、そこから金利が動いたときに月額と総返済がどこまで増えるのかを把握する目的です。

【シミュレーション例:借入3,000万円/35年】

金利月返済総返済差額
0.5%(現在)77,875円3,271万
1.0%(+0.5%)84,685円3,557万+286万
1.5%(+0.5%)91,855円3,858万+587万

金利が1%上がると、毎月の返済は約7,000〜1万円前後増えるケースが多いです。これを年単位で見ると8〜12万円前後の負担増になり、返済期間全体では表のとおり約286万円の差になります。まずは、「今の返済額に+1万円しても生活が回るか」をひとつの判断軸にする方法があります。
据え置きを前提にせず、金利が上がった後でも成立する返済額にしておくことが大切です。これが、金利上昇局面で気を付けるべきポイントです。

編集長のコメント

住宅ローンって、実は家を買う話よりも、この先無理なく暮らし続けられるかを第一に相談すべきことなのです。この仕事を続けてきて、本当にいろんな家庭を見てきました。

  • 返済比率35%で借りて、気づけば子どもの習い事を全部やめることになった家庭
  • 諸費用までローンに入れてしまい、5年後に「もう限界です」と相談に来た夫婦
  • 金利が上がって返済額が増え、結果的に家を手放した方

こうした家庭に共通していたのは、返済額そのものよりも、想定外の出費に触れた瞬間に息切れしたという点です。毎月の家計ではなく、数年おきに来る出費で止まる形でした。
銀行は返済比率を見ますが、家計は教育費・車検・修繕といった現実のサイクルで止まります。数字が合っていても、暮らしが進まない場面が出ます。
私の仕事は、返済額の是非ではなく、止まったときに戻れる位置で契約してもらうことでした。回るかどうかではなく、揺れても立て直せる位置かどうか。ここを間違えなければ、家は暮らしの味方になります。
だから、私はいつもシンプルにお伝えしています。

「無理なく続けられる返済額を、一緒に決めていきましょう。」

まとめ

  1. 返済比率は手取り20〜25%以内。これは家計が止まらないラインです。
  2. 年収別の適正額はおおむね年収の5倍以内。5~7倍の“借りられる額”とは別物です。
  3. 金利上昇を前提に+1万円を見込んでも続く返済額かを確認しましょう。

家は“返せる額”ではなく、“家族が暮らし続けられる額”で決める。この基準を守れれば、家計は長期でしっかり安定します。

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この記事を書いた人

PropFP編集長のアバター PropFP編集長 宅建士 × CFP®

不動産業界15年
宅地建物取引士
CFP®(Certified Financial Planner™)

不動産の仕入・新築開発販売・リフォーム再販・投資用仲介・賃貸管理・隣地調整など、実務の川上から川下までを幅広く経験。

「不動産の知識だけでは、お客様を守れない」
その実感から、不動産 × お金 の両側面を正直に伝えるメディアとして PropFPを運営。
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