土地を売る、相続で土地を分ける、建築を進める。
こうした場面で必ず出てくるのが「境界の確認」です。普段は意識しない境界でも、手続きの前に整理しておく必要が生まれます。境界の確認は複雑ではありませんが、進め方には決まった順番があります。
結論:境界は「特定」と「合意」で成り立つ
境界を確認するときに必要になるのは、主に次の2つです。
- 測量:境界点(境界標の有無)と線を特定する作業
- 立会い:隣地と認識をそろえる手続き
測量は、売却や相続だけでなく、土地の利用を変える場面や、現地と登記の線に差がある場合にも必要になります。この2つを進めるにあたっては、費用と期間が一定としてかかります。
- 費用の目安:35万〜80万円
- 期間:3〜6ヶ月ほど
境界は、図面上の線を特定し、関係者で認識をそろえることで確定します。現地の境界標が失われている場合は、測量で位置を復元し、その後に立会いで合意します。
境界確認は、所有者が関わるタイミングがいくつかあります。どのように動くことになるのかを知っておくと、進め方のイメージが持てます。
境界の確認が必要になるとき
境界の確認は、普段の生活の中では触れる機会が多くありません。土地の扱いを進める際に、線の根拠を確認する必要が生じることがあります。そのきっかけになる状況をいくつか挙げます。
求められるケース
境界が具体的に使われる場面はいくつかに絞られます。典型的なのは、売却・相続に伴う整理・土地利用の変更に関わるときです。
売却のとき(購入検討者とのやり取り)
土地の売却では、購入検討者から次のような確認が入ります。
「この土地は、どこからどこまでが敷地ですか」
「このブロック塀やフェンスは、境界と合っていますか」
「測量はされていますか。いつの図面ですか」
「面積は確定していますか」
これらは、購入後に隣地とトラブルになる可能性を避けたい、また建築や資金計画を前提どおり進められるかを確かめるための質問です。境界の根拠が示せない場合、追加の確認や条件整理が必要になることがあります。
相続・権利関係の整理のとき(当事者間の確認)
相続では、相続人同士の話し合いの中で、次のようなやり取りが出ます。
「今回の相続対象は、どこまでの土地になるのか」
「この線を前提に分けて問題ないのか」
「将来売ることになったとき、支障は出ないか」
これらは、分け方に不公平が出ないか、あとから揉める余地を残さないかを確認するための問いです。境界がはっきりしないままだと、話し合い自体が進みにくくなることがあります。
土地の利用を変えるとき(設計・申請段階)
土地の使い方を変えるときは、計画や申請の途中で確認が入ります。
「この敷地形状で、建築確認は通りますか」
「この配置で、隣地との離隔は足りていますか」
「道路との境は確定していますか」
「越境している部分はありませんか」
これらは、計画どおりに建てられるか、申請をやり直す必要がないかを事前に確認するためのものです。境界が整理されていない場合、計画の修正や追加確認が必要になります。
境界標と境界線を確認する理由
境界の確認が必要になる場面では、境界標がどこにあるのか、境界線がどこを通っているのかが問題になります。
売却や相続、土地利用の検討では、これまで気にされてこなかった境界標の位置や、図面上の境界線と現地の状況が一致しているかが問われます。
境界標が失われていたり、現地の塀やフェンスと境界線の位置がずれていたりすると、当事者ごとに認識の差が表に出てきます。
こうした差を整理するために行うのが、境界標の位置を確認し、境界線を特定する作業です。
「昔からこの塀の位置が境界だと思っていた」という誤認は珍しくありません。
境界は「実測」と「立会い」で確定する
測量と立会いは、個別に行うものではありません。境界を手続きや判断に使える状態にするための一連の工程として、セットで進みます。
測量と立会いの流れ
立会いは、土地家屋調査士主導のもと、次の流れで進みます。
- 現況測量図の作成:現地にある境界標や構造物を確認し、現在の状況を測量して図面を作成します。
- 立会い依頼・日程調整:隣地所有者へ測量と立会いの趣旨を説明し、日程を調整します。
- 立会いの実施:所有者・隣地所有者が現地に集まり、境界標の位置を確認し、境界線について認識をそろえます。
- 境界確認書の取り交わし:合意内容をお互いの署名捺印により書面として残します。
- 確定測量図の作成:確定した境界を基に図面を作成します。
この工程を経ることで、境界は手続き上の根拠として扱える状態になります。
立会いで起こりやすいこと
立会いは、必ずしも一度で終わるとは限りません。現場では、次のような調整が必要になることがあります。
① 隣地が立会いにすぐ応じない
忙しさや過去の経緯から、日程調整に時間がかかる場合があります。調査士を通じて説明を重ね、調整を進めます。
②境界に対する認識の相違
塀や植栽の位置、これまでの使われ方と、登記上の境界が一致しないケースです。図面や資料を確認しながら、整理を行います。
③ 越境している物が見つかる
屋根・雨樋・塀・樹木などが、境界を越えている場合があります。覚書で整理するか、将来の撤去を前提に対応します。
多くの場合、土地家屋調査士を通じて状況を整理し、関係者の認識をそろえることで対応が可能です。
実務で押さえておきたい補足事項
境界の確認は、実測と立会いを進めれば終わり、という話ではありません。実務では、その途中や前後で「これはどう扱うのか」「どこまで想定しておくべきか」と迷いやすい点がいくつかあります。
ここでは、境界確認を実際に進める際に、事前に押さえておきたい補足事項を整理します。
境界確認書と第三者継承という考え方
境界の立会いが無事に終わると、隣地所有者との間で境界確認書という書類を取り交わします。これは「この境界線で合意しました」という事実を残すための書面で、土地家屋調査士が作成し、双方が署名・押印します。
ここで考えておきたいのが、「この合意は、将来もそのまま使えるのか」という点です。自分が土地を売却したり、相続で引き継いだりした場合でも、この境界の合意が次の所有者に引き継がれるのかという問題があります。
そこで重要になるのが、第三者継承という考え方です。境界確認書に「本合意は土地の所有権が第三者に移転した場合にもその効力を有する」といった文言を入れておくことで、この合意を将来の所有者にも引き継ぐ意思があったことを明確にできます。
双方の署名・押印がある境界確認書は、それ自体が合意の証拠になります。さらに第三者継承の文言を入れておくことで、「その場限りの合意」ではなく、後の手続きでも同じ境界として扱う前提を残すことができます。
なお、境界確認書とは別に、境界の位置をより確かな形で残したい場合には、地積測量図として法務局に登録する方法があります。
地積測量図の役割
確定測量を実施したあと地積更正登記(測量結果を法務局に正式登録する手続き)を行うことで、確定測量図は地積測量図として法務局に登録されます。この登録により、測量結果は法務局が管理する公的な記録として扱われ、確定測量図は地積測量図として法務局に登録され、その作成根拠として境界確認書が存在する状態になります。
手元の書類だけでも合意の証拠にはなりますが、第三者が関わる局面では「その根拠を誰でも追える状態か」が問われます。法務局に備え付けられた地積測量図があると、購入検討者や金融機関、設計士や建築会社とのやり取りで、境界の根拠を示す際の説明が一段強くなります。
もう一つ大きいのは、境界標が消えたときの耐性です。確定測量図を手元で保管していても、紛失や引き継ぎ漏れが起きれば意味が薄れます。地積測量図として法務局に残っていれば、必要なときに取得できるため、測量士が位置関係を復元しやすくなります。結果として、後から境界の説明や確認をやり直す負担が減ります。
相続や分割の話し合いでも同じです。当事者の記憶や手元資料に依存せず、公的記録を前提にできるため、協議の基準が揺れにくくなります。このように、手続きが進む場面ほど、どこに・どの形で根拠が残っているかが効いてきます。
地積更正登記の追加費用は、確定測量後に5万〜10万円程度が目安です。必須ではありませんが、確定測量と立会いで整えた内容を強い形で残すという意味では、その金額で得られる効果は小さくありません。
通行・掘削承諾について
私道に接する土地では、日常の通行利用や、将来的な建築工事に関連して、通行利用や掘削工事に関する承諾が必要になる場面があります。他人の土地を通る、使う、掘るといった行為は、原則として土地所有者の了解を要するためです。
しかし、これらの承諾は、境界確定や測量に必要な手続きではありません。本来は、通行利用や建築工事といった、土地の利用行為を想定して取得されるものです。
実務上は、確定測量を依頼する際に、「将来の通行利用や建築工事を見据えて、通行・掘削に関する承諾書もあわせて取得しておきたい」という意図で、土地家屋調査士に承諾書の取得をついでに依頼するケースが見られます。
多くの場合、調査士が事情を説明し、承諾書の作成や署名・押印の取りまとめまで対応しますが、これは測量の法定業務ではなく、別目的の承諾行為に対する実務上のサポートです。
そのため、調査士によっては業務外として扱われたり、別途対応・別費用となる場合があります。確定測量を依頼する際には、通行・掘削承諾が「測量のための承諾ではない」ことを理解しておくと、認識の相違を防ぎやすくなります。
- 通行・掘削承諾の具体的な注意点やトラブル対応については、別記事で詳しく解説します。
費用と期間を押さえる
境界確認にかかる費用と期間は、一律ではありません。測量の種類と関係者の範囲によって、大きく変わります。
現況測量(簡易版)と確定測量(本格版)
境界確認で使われる測量は、大きく二つに分かれます。目的によって、選ぶべき測量は変わります。
現況測量:今の状態を把握する
現況測量は、現地にある境界標や構造物をもとに、土地の形状や面積を把握する測量です。
- 用途:概算の面積確認、建築計画の参考、相続税申告
- 特徴:隣地立会い不要、境界の確定は行わない
- 費用:10〜20万円
- 期間:2週間前後
建築計画の初期検討や、税務目的(相続税の申告など)に使う場合は、現況測量で足ります。一方で、売却や分筆を予定している場合は、後から確定測量が必要になります。
確定測量:隣地との境界を確定させる
確定測量は、隣地所有者の立会いのもとで境界を確定させる測量です。
- 用途:境界の確定(分筆、売却、トラブル回避の安全書類)
- 特徴:隣地立会い必須・境界確認書を作成
- 費用:35〜80万円
- 期間:3〜6ヶ月
確定測量は、どこと接しているかによって「民民査定」と「官民査定」に分かれます。民地同士の境界を確定する場合は「民民」、道路や水路など、官有地と接している場合は「官民」と呼ばれます。
| 種類 | 内容 | 費用相場 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 民民査定 | 隣地所有者との立会いと合意が中心 | 35万〜50万円 | 3〜4ヶ月 |
| 官民査定 | 道路との境行政との協議や承認が加わる | 60万〜80万円 | 4〜6ヶ月 |
確定測量の境界確認にかかる費用や期間は、測量そのものよりも、立会いと調整にどれだけ時間がかかるかで左右されます。
- 関係者が多い
- 境界標が失われている
- 官有地が絡む
こうした条件が重なるほど、想定以上の費用がかかったり、長期間になりやすい傾向があります。
費用と期間は、測量の種類と関係者の範囲、そして立会いや調整にかかる手間によって決まります。
編集長のコメント
ここまでで、境界確認の基本は一通り見えてきたと思います。今回はその続きとして、少し毛色の違う話です。
分譲地を友人が購入したケースです。
分譲地とは「すでに決まっている土地」という前提で話が進みやすいものです。販売図面があり、区画が示され、面積も明記されていればなおのこと、ここで大きな確認の漏れが起きるとは、通常は考えられません。
友人は、分筆予定が示された販売図面を前提に設計プランを出してもらい、本人はその内容に納得したうえで土地の契約と境界確認書を取り交わし、その後、決済も無事終えました。この時点では、誰も違和感を持ちませんでした。
しかし後日、建築申請のための測量を行った際に、境界の確定面積が異なっていることが発覚し、予定のプランは成立しないことが分かりました。
この分譲地のケースでは、外側の境界は先に整理されているものの、その内側は、仮区画図を基に、購入した当事者同士で境界が確定される条件でした。そのうえ、先に購入した区画が登記されるため、後から買う側がその区画の境界線に合わせる形となり、その結果、多少の差異が生まれたという内容でした。友人は後者です。
友人から相談を受けた時点では、すでに登記は終わっており、こちらに提案の余地は残っていませんでした。
この内容を踏まえると、問題は測量の有無ではなく、示された内容をそのまま使い、「ここはもう決まっているだろう」と関係者が思い込み、気づけば先へ進んでいた、という話です。
今回は分譲地で起きた設計の場面を例にしましたが、これは売却でも、相続でも同じです。
この境界で価格の話ができるか。
この境界で分ける話ができるか。
この境界で建てる判断ができるか。
結局のところ、境界確認の基礎に戻ります。
「その境界、お互いの認識と合っていますか?」
まとめ
- 境界確認は、測量と立会いがセットになる
- 境界は、売却・相続・設計などの判断の基準に使われる
- 費用や期間は、測量の内容と関係者によって変わる
境界確認は、土地を安心して扱うための、基本的な準備です。
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