空き家はどう向き合う?現状をつかむ3つの視点|M-01

空き家を受け継ぐ場面は、相続や贈与など、思いがけないかたちで訪れることが多いです。そのままにしておくのは気がかりだけれど、どこから見ていけばいいのか迷う方も少なくありません。空き家と向き合う第一歩は、不動産の“今”を正確に把握することから始まります。

目 次

結論:把握すべきは「建物・立地・費用」の3つ

空き家をどう扱うか判断するための最初の軸は、①建物の状態 ②立地条件 ③費用負担の3つです。

  • 建物の状態
    • 雨漏りや設備の可否を確認し、現状で利用できる範囲を把握する。
  • 立地条件
    • 駅距離や周辺の需要を踏まえ、どの活用方法と相性が良い場所かを判断する。
  • 費用負担
    • 固定資産税などの年間コストと修繕の概算を押さえ、負担の大きさを確認する。

この3点が見えてくると、活用・解体・売却などの次の判断が進めやすくなります。

建物の状態を把握する

・同じ築年数でも、放置期間で状態が大きく変わる
・「どこに問題があるか」が今後の選択に直結する
・専門家診断を組み合わせると詳細が分かる

まず建物がどんな状態かを知る必要があります。これから「放置期間による劣化」「傷んでいる箇所」「専門家診断」の3つを順に見ていくことで、空き家の現在地が把握しやすくなります。

築年数と劣化のバランスを見る

空き家は、利用されている家と比べると劣化が早く進む特徴があります。同じ築年数でも、“住んでいる家”と“空き家”では状態がまったく違います。

【利用中の物件と空き家の違い】

項目利用中の物件空き家
換気日常的に行われるほぼゼロで湿気がこもる
通水(キッチン・風呂)毎日流れるので配管が乾かない水が流れずサビ・腐食が進む
室温変化人の出入りで安定する季節の温度差で内装が傷む
カビ発生しにくい発生しやすい(特に北側・水回り)
シロアリ発見が早い気づかずに進行する
外回り(外壁・屋根)破損に気づきやすい雨漏りに繋がる

空き家の場合は、築年数よりもどれだけ放置されてきたかが実際の状態に直結します。築年数と劣化の両方を見ていくことで、その家がどこまで使えるか掴めてきます。ほとんどの空き家の場合、放置期間長いことが多いので… あとはご想像にお任せします。

建物診断のチェックポイント

空き家の状態を判断するうえで、「どこが傷んでいるのか」を把握しておくことが、次の選択に繋がります。外回り・水回り・床下・設備・耐震性。この5つは最初に確認しておきたい部分です。

チェック箇所確認ポイント
外壁・屋根ひび割れ、雨漏り、コーキング劣化
水回り(風呂・トイレ)配管のサビ・腐食、水漏れ
床・柱傾き、沈み、シロアリ被害
設備(電気・ガス・水道)使用可否、漏電リスク
耐震性旧耐震(1986年5月以前)か新耐震か

ここが判断の分岐点

状態チェックの結果が、そのまま実際の選択肢に直結します。以下は、どこが悪いとどう判断が変わるかの実務的な分岐基準です。

  • 外壁、屋根
    • 雨漏りがある場合: 補修必須
      • 外壁の上部や屋根の場合:足場代で費用が大きく跳ねる
        • 活用する場合は、先に直すことが前提
  • 水回り(配管)
    • 水漏れ・サビ・腐食: 床の解体を伴う修繕になりやすい
      • ここが悪いと修繕費が重くなる
        • 売却や解体の検討も視野に入る
  • 床、柱
    • 傾き・沈みがある場合: 構造に影響
      • 活用なら優先修繕が必要
        • 放置×築古の場合は費用に見合わない判断が出やすい
  • 設備(電気・ガス・水道)
    • 設備が使えない: 賃貸化は不可
      • 改善は最低限必要になる
        • 活用する場合は初期投資の額を見定める必要あり
  • 耐震性
    • 旧耐震の場合: 使える用途が限られる
      • 用途変更などは 新耐震基準への適合が求められる場合がある
        • 補強コストが重くなりやすい
          • 立地次第では解体のほうが合理的な場合もある

傷んでいる部分を把握しておくと、どこに費用をかけるべきか、どこは残して使えるのかが見えてきます。この段階で判断を誤ると、あとから大きな出費につながりやすいので注意が必要です。

第三者の目線で状態を確認する

自分でチェックできる範囲には限界があります。外から見えない劣化や構造部分の状態は、専門家でないと判断が難しいことも多いです。専門業者に建物診断(ホームインスペクション)を依頼すると、第三者の目線で次の項目を整理してもらえます。

  • 実際に損傷している箇所の特定
  • 修繕の優先順位
  • 活用に向けて支障のある部分の洗い出し

費用は5〜10万円ほどかかりますが、見積もり後の追加費用や、無駄な修繕を避けられるメリットがあります。

まずは自分で確認してみるだけでも、空き家の状況はつかめます。しかし、空き家は「見えないところ」にリスクが溜まりやすいので、専門家診断を早めに入れておくほど抜けが減り、結果的に不必要な出費や遠回りをしなくて済みます。

立地条件を見極める

・「都市部・郊外・地方」エリアでの役割をみる
・周辺の需要がどの選択肢を成立させるかをみる
・立地はどれだけ価値を見出せるかを左右する

立地には特性があり、マクロ的視点から物件単体まで順を追って見ていけば、その空き家が持つ可能性を引き出せます。

所在地域(エリア)の把握

それぞれの地域には、その場所ならではの特徴があります。

都市部:人と用途が密集するエリア

賃貸需要が高く、大規模な修繕費をかけても回収しやすい地域です。

  • 用途の傾向:住宅・事務所・店舗など多用途が並行して動く
  • 利用者層:単身世帯、事務所利用者、サービス業、ファミリー 等
  • 活かし方:立地の強みを活かした賃貸・店舗利用・小規模事務所 等、選択肢が広い

郊外:生活導線が広く、車移動が中心になるエリア

都心より家賃は低めですが、ファミリー層の生活拠点として安定した需要が見込まれる地域です。

  • 用途の傾向:生活基盤としての需要が軸になり、住まい用途が中心
  • 利用者層:ファミリー層、在宅ワーク層、車移動世帯 等
  • 活かし方:戸建賃貸、建て替え含む住まい利用、二拠点生活 等と相性が良い

地方:環境や暮らし方を選ぶ人が集まりやすいエリア

賃貸需要は低いですが、別荘・民泊・地域交流拠点など、ニッチな需要を狙える地域です。自治体の空き家バンクに登録すると、移住希望者とマッチングできることもあります。

  • 用途の傾向:一般賃貸より、環境を目的とした用途に向きやすい
  • 利用者層:移住希望者、滞在目的、地域コミュニティ利用者 等
  • 活かし方:民泊・別荘・地域利用・古家再生 等「その土地ならでは」との相性が良い

市区町村ごとの人口の動きや住宅需要、空き家の増減、移住施策などを見ていくことで、そのエリアの地域性を把握することができます。

周辺需要の傾向

同じ市区町村でも、街が違うだけで求められる使い方は大きく変わります。

商業性が強いエリア

人の流れが定期的に生まれ、住宅以外の用途も成立しやすい街です。

  • 用途:人通りを活かした小規模事業・サービス利用が入る
  • 利用者層:小規模事業者、サービス業、事務所利用 等
  • 活かし方:用途に合わせて再生し事業利用に転用できる
  • :物販・サービス系店舗、テイクアウト店、事務所、シェアハウス 等

生活利便が整った住宅エリア

学校・スーパー・公園などがまとまり、暮らしやすさが需要を支える街です。

  • 用途:住宅利用の中心で、売買・賃貸どちらにも動きが出る
  • 利用者層:生活導線を重視する世帯 等
  • 活かし方:建て替えも含め、住まいとしての選択肢を取りやすい
  • :戸建賃貸、ファミリー向け住宅、建て替え検討向けの土地活用 等

落ち着いた環境の住宅エリア

駅距離や商店の少なさにより、静かな住環境が形成される街です。

  • 用途:住居中心で、事業用途は限定的
  • 利用者層:静かな生活を求める世帯、在宅ワーク中心の方 等
  • 活かし方:長期利用の賃貸や、自宅兼ワークスペースとして整えやすい
  • :長期ファミリー賃貸、二拠点生活、週末利用、在宅ワーク向け 等

独自性が色濃いエリア

古い街並み、観光、文化スポットなど、「その場所ならでは」がある街です。

  • 用途:一般賃貸より、特化した使い方が選ばれやすい
  • 利用者層:観光客、クリエイター、地域活動に関わる人 等
  • 活かし方:古家再生やDIYなど、特色を活かした用途に向く
  • :民泊、別荘、古家再生、ワーケーション、地域交流拠点 等

町名レベルまで視野を落として周辺需要を見ることで、その街で実際に動いている人の層や使われ方の傾向がつかめます。このあたりで具体的な活用方法をより現実的に判断しやすくなります。

立地条件

今まで見てきたのは「〇〇市〇〇町」までの話です。ここからはさらにその家がどこに建っているかを見る段階になります。立地を見るときの主なポイントは次のとおりです。

  • 前面道路の状況:幅員、接道、車の入りやすさ
  • 高低差や地形:坂・段差・擁壁の有無
  • 周辺の生活動線との距離:駅、バス停、主要道路、地域施設
  • 周囲の建物との関係:日当たり、景観、視界、騒音

立地は、その家ごとの状況を読み解くための最後の確認です。ポイントを押さえておくことで、その空き家がどの範囲まで柔軟に対応できるかが見えてきます。

地域性(市区町村)→ 周辺需要(街)→ 立地(その家)を順番に見ていくと、その空き家の向き不向きが段階的に整理できます。

費用負担を理解する

・空き家は未使用でも毎年一定の費用がかかる
・管理の有無での年間の金額差はさほど大きくない
・管理を減らすほどリスクが積み上がりやすい

まずは費用の内容を整理し、手をかけない場合に生じるリスクも見ていきます。

空き家にかかる年間費用の考え方

空き家には、利用していない状態でも一定の費用が発生します。金額は状況によって変わりますが、まずはどの種類の費用が存在するのかを整理しておくと、年間の負担がイメージしやすくなります。

利用の有無に関係なく発生する費用

■ 固定資産税

利用の有無に関わらず課税されます。住宅用地特例が使われている場合は軽減がありますが、管理状態によって扱いが変わる可能性があります。

物件を放置しないために必要となる費用

■ 外回り・点検などの最低限の管理

雑草・郵便物・外壁の傷み・雨樋の詰まりなど、放置すると近隣トラブルや建物劣化につながる箇所です。

最低限の管理を行わない場合:

  • 建物の傷みが進みやすい
  • 景観・衛生面での指摘を受ける可能性
  • 行政の「管理不全空き家」指定に繋がることがある

費用は必ずではありませんが、対応しないことによるリスクが大きいところです。

契約方針によって金額が変わる費用

■ 火災保険(任意)

加入は任意ですが、空き家特有のリスク(風災、倒木、漏電火災、放火など)から、加入を継続している世帯もあります。未加入であれば費用は発生しません。

■ 電気の基本料金(任意)

契約を停止すれば0円になりますが、次の理由で契約を残す場合もあります。

  • 点検・修繕で電源が必要
  • 換気扇・湿気対策で電気を使いたい
  • 井戸ポンプ等で電源が必要な地域もある

必要な費用の種類が整理できると、年間でどれくらいの負担になるのかを具体的に計算できます。

年間費用のシミュレーション

空き家を利用していない場合でも、建物と周辺環境を維持するために、毎年一定の負担がかかります。戸建の平均的な負担水準をもとに、放置した場合の年間費用を比較しています。

【最低限の管理を行っている場合】

費用項目年間金額(目安)補足
固定資産税10〜15万円全国的な一般水準
管理費(年2〜3回)5万円前後草刈り・点検など
火災保険1.5〜2万円火災・風災中心のプラン
電気基本料0.3〜0.5万円契約中
合計約17〜23万円

【管理も契約も行わない状態の場合】

費用項目年間金額(目安)補足
固定資産税10〜15万円
管理費0円未実施
火災保険0円未加入
電気基本料0円未契約
合計約10〜15万円

2つのパターンを比べると、年間の金額差はそこまで大きくありませんが、管理を減らすほど、建物の傷みや近隣対応、行政リスクが積み上がり、後に必要となる費用と手間が大きくなっていきます。

管理を控えたときに起こりやすくなること

  • 外壁・屋根など外回りの劣化が加速し、修繕の費用幅が広がる
  • 雑草・落ち葉・害虫などが発生し、近隣からの連絡や苦情が増える
  • 郵便物の滞留や外観の傷みにより「管理不全空き家」に指定されるリスクが高まる
  • 台風・火災などの損害が保険なしでそのまま自己負担になる
  • 劣化の進行によって、賃貸・売却・活用に戻すための初期費用が跳ね上がる

どこまでを「リスクを抑えるための費用」として扱うかを決めておくことが大切です。

空き家を取り巻く最新の動向

2025年11月(国交省):空き家対策として17.52億円を計上。品質検査・補修を支援。
2025年5月(空き家バンク):参加1,106団体、成約累計約21,700件に到達。
2024年4月(総務省):空き家数約900万戸、空き家率13.8%と過去最高。
2023年12月(法改正):「管理不全空き家」を新設。勧告で固定資産税が最大6倍に。
補助金制度(全国):解体費用や改修の一部補助などを自治体が実施。

編集長のコメント

物件調査の際、空き家を目にすると、持ち主の気持ちより先に家だけが時間を進めているなと感じることがあります。
名義が次世代に移っているのに実感が追いつかず、ふと見ると外壁の細いひびや、膝ほどの草、雨樋に絡む細いツタが静かに広がっている。空き家は、持ち主が困る前に家のほうが先に変わっていくところから始まります。
劣化の進行、固定費の増加、近隣からの指摘。困りごとは突然現れるのではなく、気づかないうちに蓄積し、ある時期に一気に表面化します。放置した期間に応じて、負担は確実に大きくなっていきます。

「家のほうは静かに積み重ねていますよ。」

まとめ

  • 空き家を見るときは建物の状態を確認する。使える部分と手を入れる部分が分かると、必要な作業や負担が具体的になります。
  • 立地の条件を押さえることで、その場所に合った判断材料がそろう。地域の動き・周辺の様子・建っている位置が、現実的に取れる選択の基礎になります。
  • 年間費用とリスクを整理すると、保有に必要な負担が見える。固定資産税・最低限の管理・放置リスクを合わせて、維持に必要な範囲をつかめます。

空き家は「建物・立地・費用」をそろえて現状を把握すると、次の動きが決められます。

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この記事を書いた人

PropFP編集長のアバター PropFP編集長 宅建士 × CFP®

不動産業界15年
宅地建物取引士
CFP®(Certified Financial Planner™)

不動産の仕入・新築開発販売・リフォーム再販・投資用仲介・賃貸管理・隣地調整など、実務の川上から川下までを幅広く経験。

「不動産の知識だけでは、お客様を守れない」
その実感から、不動産 × お金 の両側面を正直に伝えるメディアとして PropFPを運営。
不動産の良い面と注意点の両方を踏まえて、落ち着いて判断できる情報を届けています。

■ PropFP = Property(不動産)× Financial Planning(資金計画)

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