宅建士×CFP®で見えた「本当に必要な視点」とは

不動産の現場で長く仕事をしてきた中で、「不動産の知識だけでは守れない領域がある」と実感しました。
この記事では、その理由と、宅建士 × CFP®として見えてきた視点をお話しします。

不動産の現場で積み重ねてきた経験と、そこで見えた“資格の壁”

不動産業界に携わって15年——
仕入業務から始まり、新築物件の開発、リフォーム再販、仲介、賃貸管理、隣地調整まで。不動産ビジネスの企画から販売・管理まで、一連の流れを実務で経験し、今も現役で走り続けています。

仕入れを中心に働いていた頃は、数多くの物件調査や査定を重ねる中で、宅建士としての“物件を見る力”が磨かれていき、「この土地は買い」「この物件は避けるべき」そうした判断も、日々の業務で積み重ねてきた経験から、迷わず下せるようになっていました。

業界に入って7年ほどが経ち、販売にも本格的に携わるようになった頃、状況が大きく変わりました。これまでの物件所有者の方との交渉や業者との商談とは違い、相談に来られる方々は、マイホーム購入を考えるご家族や投資物件の検討を始めたばかりの方など、不動産という大きな買い物に向き合う、さまざまな背景を持つ一般の方々でした。ここで初めて、相談される内容そのものが変わったのです。

「この返済額で、本当に続けていけるんでしょうか?」
「変動にしたら金利が上がったときが怖いんですが…」
「買った後にお金が足りなくなるようなことはありませんか?」

物件の確認よりも先に、相談される方からはこうした「お金の不安」が出てきます。どれだけ物件を見る力があっても、お金の知識がなければ、本当に安心できる提案にはならない。その現実に、この頃ようやく気づき始めたのです。

数字で裏付ける力が決定的に不足していた

相談者様の不安に向き合う中で、もう一つ痛感したことがあります。「数字で示す」という武器を、私は持ち合わせていなかったことです。

  • 年間収支の試算
  • ローン返済後の毎月キャッシュフロー
  • 数年後の資産推移イメージ
  • 税負担の変動

こうした数字の裏付けがなければ、どれだけ物件に詳しくても、本質的な提案にはなりません。不動産は、多くの方にとって一生に一度の大きな買い物となります。
だからこそ、感覚ではなく「数字が示す根拠」が必要でした。

転機となった、お客様との出来事

ある日、知人から「マイホームの購入を考えている友人がいるんだけど、相談に乗ってあげてほしい」と紹介を受けました。

当時の私は、仕入れ中心の仕事から販売にも本格的に関わるようになったばかりのタイミング。不安もありましたが、知人の紹介ということもあり、なんとか力になりたい、その一心で相談を引き受けました。
探し始めて数日後は、要望にぴったり合う物件を見つけることができ、お客様もとても気に入ってくださいました。その時の内見の雰囲気もよく、私も「これはいける」と手応えを感じていました。しかし、住宅ローンの審査に進んだ瞬間、状況は一変します。

「お客様のご年収では、この金額はお借りいただけません。」

銀行担当者の言葉に、私は何も返せませんでした。本来であれば、最初にお客様が「いくら借りられるか」を確認してから物件選びを進めるべきだった。その順番を誤ったせいで、お客様の大切な時間を無駄にしてしまったのです。
結局、そのお客様は別の業者で成約されました。悔しさよりも、ただ申し訳ない気持ちでいっぱいでした。特に今回は、知人の紹介だっただけに、その思いは強く残りました。
物件を探すこと自体は、不動産業者であれば当然の業務です。けれど「その人が本当に買える物件」を提案するには、不動産の知識だけでは足りない。お客様を本当の意味でサポートするためには、お金の専門知識が欠かせない。この経験が、私の仕事観を大きく変えるきっかけになりました。

CFP®取得を決意した理由

不動産の提案には、お金の知識が欠かせない。そう気づいた私は、まず行動に移しました。最初の一歩として選んだのが、ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)2級の取得です。
無事に資格をとったことで、「これでお金の相談もある程度カバーできるだろう」と正直どこかで安心していました。ところがある日、友人からこう言われました。

「FP持ってたよね?聞きたいんだけど、うちみたいな家庭だと、この保険って意味あるかな?」

本当に軽い感じの相談でした。しかし、私はその場で固まりました。
——あ、答えられない。
FP2級は取った。勉強もしたつもりだった。でも、目の前の「現実の家庭の悩み」に対して、自信を持って答えられない自分がいました。その瞬間、気づいたんです。

「資格を取っただけで満足していたのは、自分だけだった」
「実務として使えるレベルには、まったく届いていない」

相手は気軽に相談しただけ。責められたわけでもない。でも、友人が「本当に安心したい気持ち」を、私は受け止めきれなかった。あの小さな質問が、自分の弱さを真正面から突いてきました。

「このままじゃ、誰の不安も解消できない」
「不動産もお金も、“どちらも守れる存在”にならなければ」

そう強く思うようになりました。FP2級を取っただけで満足していた自分。でも、それは「入口に立っただけ」だったことに気づかされました。
——どうせやるなら、とことん突き詰めるしかない。

そう覚悟を決め、私はFP資格の最高峰であるCFP®(Certified Financial Planner™)に挑戦することを決めました。正直、周りからはいろいろ言われました。

「その資格ってなに?」
「不動産屋がCFPなんて取っても意味ないでしょ。」

でも、そんな雑音はどうでもよかった。これは自分のためでもあり、不動産で人生を決めるお客様のためでもある。そう思った瞬間、迷いは一切ありませんでした。

そこから約10ヶ月間、仕事の合間や深夜まで、ひたすら勉強に没頭。勉強時間の記録なんてつけていませんでしたが、とにかく必死でした。そしてついに、CFP®を取得し、「やっとスタートラインに立てた」そんな感覚でした。

2つの資格で見える「本当の最適解」

不動産は物件だけでは完結しません。
物件 × 家計 × 将来の支出この3つを同時に見てこそ、「本当に後悔のない選択」になります。CFP®を取得したことで、私はこの「3つの視点」を同時に扱えるようになり、ここから、私の提案は大きく変わっていきました。

予算の決め方が根本から変わった

以前は「物件を見てから、ローンを通す」という順番で話が進みがちでした。しかし、FPとして家計を深く見るようになってから、アプローチが明確に変わりました。
現在は、まず最初に家計の未来から「現実的な借入可能額」を逆算します。

  • 年収
  • 家族構成
  • 教育費のピーク
  • 保険・投資・貯蓄のバランス
  • 将来のキャッシュフロー

これらを確認することで、最初の段階でこう言えるようになります。

「安全ラインは月々〇万円です。」
「変動か固定かはリスク許容度で決まります。」
「10年後の支出を見据えて組みましょう。」
「繰上返済はこのタイミングが効率的です。」

数字を根拠に「予算の天井」が明確になるため、お客様が迷うポイントが激減します。

物件選びも仕様選びも最初で迷わなくなる

現実的な「予算の天井」が決まると、その後の判断が、一気にクリアになります。

まずは、物件選び。

「こちらの予算なら、このエリアでこのくらいの規模感なら無理なく狙えます。」
「新築では難しいので、中古物件も視野に入れてみましょう。」

このように、最初から選択肢の幅が適切に絞れるので、目的地のない地図をさまよう必要がありません。しかも、予算が明確だから、安いだけの物件に振り回されることもなくなります。

次に、建築・仕様の打ち合わせ。
間取りや設備の選択は、ひとつで数万円〜数十万円変わります。ですが最初に「予算の天井」があるから判断がブレません。

「このオプションを付けると+〇万円です。」
「月々は+〇〇円だけ増えます。」
「教育費のピークを踏まえても、許容範囲はこのあたりです。」

とすべて数字で比較できます。ここで、少し予算に余裕がある場合には、次のような付加価値が残るオプションを付けることも可能です。

  • 断熱性能のグレードアップ(光熱費低下+資産価値UP)
  • 水回りの耐久性UP(リフォーム周期が伸びて家計に優しい)
  • 将来売却でも評価されやすい設備(浴室乾燥・食洗機など)
  • 老後の生活負担を軽減する設備(段差・動線設計など)

つまり、ローン設計 ➤ 物件選び ➤ 仕様選び ➤ 引渡し(購入)すべてが一本の軸で繋がり、後から「あれやらなきゃよかった…」が激減する。不動産検討って本来こうやって進めるべきなんです。

金融機関とのやりとりが変わった

そして、ここからがもう一段変わった部分、金融機関とのやりとりです。以前は、物件概要書や簡易的な収支計算を添える程度、いわゆる「物件資料」を形だけそろえて出す、そんな仕事ぶりでした。しかし、FP目線で考えるようになってからは、「資料の作り方」そのものが大きく変わりました。銀行が本当に見たいのは、「このお客様は返済を続けられるのか?」その一点です。そこで私は、次のような資料を作成するようになりました。

  • 詳細な収支シミュレーション(固定費・変動費・税金など)
  • 金利上昇を想定した返済計画表
  • 10年/20年の年間キャッシュフロー表
  • 自己資金の最適配分(頭金・諸費用・生活予備費など)
  • 出口戦略(売却時の残債と想定売却額のバランス)
  • 空室/修繕リスクを織り込んだストレステスト

これらの情報を整理して提出すると、金融機関側も審査の判断材料がそろうため、結果的に話がスムーズに進むことが増えました。

宅建士×CFP®だからこそ届けられる本当の提案

物件を見る力×家計を見る力。
不動産の「資料」に、FPとしての「数字の分析」が加わることで、提案としての精度は一段と高まり、お客様の反応も明らかに変わっていきました。

「この人は物件だけじゃなく、お金のことまで分かってる。」
「ライフプラン全体で考えてくれるから安心できる。」

そんな声をいただくようになったのです。私が見ているのは、「物件そのもの」ではありません。その選択が、数年後・十数年後の家計にどう影響していくのか。そこまで踏まえた上で、一緒に最適解を探していく。これこそが、宅建士とCFP®の二つの視点を持つ意味だと、今は強く感じています。

このサイトで伝えたいこと

不動産のことを考えるとき、「物件の良し悪し」だけでも、「お金を持ってる」だけでも完結しません。両方をあわせて捉えてこそ、ようやく本当に納得できる判断ができます。

長くこの業界に身を置く中で、私は何度もその現実を目の当たりにしてきました。どれか一つの知識に偏ると、どうしても判断が片寄ってしまう。その限界に気づき始めたのです。そしてCFP®を取得したことで、「不動産」と「お金」を同時に扱う重要性をより深く理解しました。その時、はっきり思ったのです。

「この視点を必要としている人が、確実にいる」
「不動産業界のリアルを届けなければならない」

そうして生まれたのが、このサイト。
PropFP:Property(不動産) × Financial Planning(資金計画) です。
扱う内容は、住まい・土地・投資・活用。テーマは4つに渡りますが、どんなケースでも根っこにある考えはひとつです。
「物件の本質」と「資金計画」を同じ視点で扱うこと。この前提が揃っていれば、判断を誤ることはほとんどありません。
不動産は、多くの人にとって人生でもっとも影響の大きいジャンルです。
だからこそ、「正しい知識」と「判断基準」を持ってほしい。ここでは、そのための「現場基準の情報」を余すことなく発信していきます。

このサイトが、あなたの納得できる選択を支えられますように

不動産は、その瞬間よりも「その後の計画」が何より重要です。だからこそ、事前にどんな情報を得られるかが、未来の安心を大きく左右します。
このサイトの記事が、あなたの判断材料となり、迷ったときに立ち戻れる「拠りどころ」になれたら。

ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

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この記事を書いた人

PropFP編集長のアバター PropFP編集長 宅建士 × CFP®

不動産業界15年
宅地建物取引士
CFP®(Certified Financial Planner™)

不動産の仕入・新築開発販売・リフォーム再販・投資用仲介・賃貸管理・隣地調整など、実務の川上から川下までを幅広く経験。

「不動産の知識だけでは、お客様を守れない」
その実感から、不動産 × お金 の両側面を正直に伝えるメディアとして PropFPを運営。
不動産の良い面と注意点の両方を踏まえて、落ち着いて判断できる情報を届けています。

■ PropFP = Property(不動産)× Financial Planning(資金計画)

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