不動産投資の全体像を整理する:種類と収益のしくみ|I-03

不動産投資に関心を持つと、現物を持つ投資から出資する投資まで、いくつもの選択肢が並びます。同じ不動産投資でも、何がどう違うのか。どれから見ればいいのか。収益の入り方はどうなるのか。まずは全体像を押さえます。

目 次

結論:投資方法の全体像をつかむ

不動産投資は、種類によって持つ単位も自分で決める内容も変わります。

種類ごとの見分け方

種類投資単位自分で決めること
一棟アパート・マンション建物全体(複数戸)家賃設定、空室対策、修繕計画まで全体で判断する
戸建建物1棟1物件の賃貸条件と修繕を個別に判断する
区分マンション1室室内の賃貸条件は決めるが、建物全体は管理組合に従う
駐車場土地・区画賃料設定や稼働状況を見ながら運用を調整する
借地土地利用条件と契約内容を決めて貸し出す
REIT投資口投資先の選定のみ行い、物件運用には関与しない
不動産クラウドファンディング出資単位案件を選び出資し、運用は事業者に任せる
私募ファンド出資単位ファンドを選択し、運用判断は運用者に委ねる

一棟・戸建・区分・駐車場・借地は、家賃や利用料を受け取りながら保有し、売却まで含めて収益を見ていく投資です。REIT・不動産クラウドファンディング・私募ファンドは、分配や償還を受け取る投資です。
一つひとつを細かく見る前に、まず全体像をつかみ、自分がどの投資法から考えるかを整理することが、不動産投資の第一歩です。

物件を持つ投資と、出資で関わる投資

・投資は現物と出資型に分かれる
・現物は不動産を所有して運用する
・出資型は不動産運用に資金を投じる

不動産投資は、まず「自分で不動産を持つか」「運用に出資するか」で分かれます。
現物を持つ投資は、土地や建物といった不動産そのものを自分の名義で持つ投資です。一棟アパート・マンション、区分マンション、戸建、駐車場、借地などがここに入ります。一方で、REITや不動産クラウドファンディング、私募ファンドは、物件を持つのではなく、不動産の運用に参加する投資です。
同じ不動産投資でも、関わり方はここで大きく変わります。

現物を持つ投資

現物投資は、不動産を自分で持ち、その使い方によって収益を作る投資です。
たとえば、一棟アパートであれば、8戸ある建物をどう埋めるか、どのタイミングで修繕するか、賃料をどう設定するか。こうした判断の積み重ねがそのまま収益になります。一室ではなく、建物全体をどう回すかがポイントです。

区分マンションは、一室単位で関わる投資です。室内の設備や賃料は自分で調整できますが、外壁や共用部、大規模修繕は建物全体のルールに従います。同じマンションでも、一棟と区分では関われる範囲が大きく違います。

戸建は、その建物をどう使ってもらうかが収益に直結します。ただし、投資対象として王道の中心に置く類型ではありません。ファミリー向け賃貸として貸すのか、古家付き土地として再生や売却まで視野に入れるのかで、投資の性格は異なります。

駐車場借地は、土地をどう使うかで収益が決まる投資です。接道条件、利用方法、契約内容によって、同じ土地でも中身は変わります。

出資で関わる投資

出資型は、不動産そのものを持たず、運用の仕組みに参加する投資です。
REIT(不動産投資信託)は、証券口座を通じて投資口を売買します。登記は伴わず、複数の不動産に分散投資されたポートフォリオに参加する形です。入口は株式投資に近い位置づけになります。

不動産クラウドファンディングは、事業者が募集する案件ごとに出資します。たとえば「都内の一棟マンションを取得して運用する案件」に対して、数万円〜数十万円単位で参加するイメージです。物件を選ぶというより、案件の条件を見て参加する投資になります。

私募ファンドは、証券会社や金融機関などから案内されることが多く、一般公開されている商品とは少し性格が違います。ファンド全体の設計や運用者の方針が、そのまま収益の出方に影響します。

現物投資が「不動産を持って動かす投資」なら、出資型は「不動産の運用に資金を預ける投資」です。
この違いを押さえると、並んでいる投資手法が名前ではなく、関わり方の違いとして整理できます。

収益の構造と、出てくる言葉

・現物は家賃や利用料で入る
・出資型は分配や償還で返る
・同じ利回りでも中身は異なる

物件を持つ投資と、出資で関わる投資に分けると、次に見えてくるのが収益の入り方です。不動産投資では、家賃や利用料として入ってくる収益と、運用の結果として分配や償還で返ってくる収益があります。どこから収益が入るのか、そのときに出てくる言葉を押さえておきます。

現物投資は、家賃と状態で収益が動く

現物投資の収益は、家賃や利用料として入ってきます。ただし、その金額は固定ではなく、入居状況や維持管理の積み重ねで変わる収益です。

たとえば一棟アパートなら、同じ8戸でも「満室に近い状態」と「空室が目立つ状態」では、利回りの見え方が変わります。ここで出てくるのが、空室率稼働率という言葉です。
さらに、家賃はそのまま残るわけではありません。外壁や給排水の修繕、設備の入れ替えが入れば、収益は削られます。このときに出てくるのが、修繕費維持費です。
区分マンションであれば、家賃収入の裏で、管理費修繕積立金が毎月出ていきます。駐車場なら、稼働率がそのまま収益に直結します。
そして最後に不動産の売却です。保有中の家賃とは別に、いくらで手放せるかという視点が入ります。ここで出てくるのが売却益です。

現物投資は、家賃収入(インカム)と売却益(キャピタル)の両方で収益を見る構造になります。

出資型は、条件で収益が決まる

出資型では、収益の入り方が変わります。家賃を直接受け取るのではなく、分配金として受け取る設計です。

たとえばクラウドファンディングで「運用期間12か月、想定利回り5%」と出ている場合、見るべきは物件の細部よりも、運用期間分配条件です。ここで出てくる言葉が、分配金想定利回り運用期間償還です。

分配が毎月なのか、満了時にまとめてなのか。元本はいつ、どう戻るのか。収益の見え方は、家賃ではなく案件の設計として提示されます。REITも同じで、個別の賃料ではなく、運用全体の結果が分配金として返ってきます。

同じ「利回り」でも、見ている中身は異なる

投資でよく目にする言葉に「利回り」があります。現物投資でも、出資型でも使われますが、見ている中身は同じではありません。

現物投資でネットに出ている利回りは、多くの場合、家賃収入だけをもとにした表面利回りです。購入時の比較には使いやすい一方で、管理費や修繕費、空室といった要素は含まれていません。
本来は、これらの費用まで織り込んだ実質利回りで見る必要があります。同じ物件でも、表面と実質では数字の意味は変わります。利回りの見方については、別の記事で整理しています。

利回りの落とし穴:表面と実質の“本当の差”|I-01

一方、出資型で出てくるのは「想定利回り」です。これは、運用期間と分配条件を前提に置かれた数字です。

たとえば、運用期間12か月・想定利回り5%の案件に出資すると、100万円に対して年間5万円程度の分配が想定されます。この分配が毎月なのか、満了時にまとめてなのか、元本がいつどう戻るのか(償還条件)まで含めて設計されています。

つまり出資型の利回りは、家賃のように日々の状況で増減していくものではなく、運用の枠組みの中で、どのように受け取るかが決まっている数字です。

検討の入り口と候補の絞り込み

・投資目的の優先順位を整理する
・投入できる資金を把握する
・自分が関与する範囲を決める

ここまで不動産投資の種類と、それぞれの収益のしくみが整理できました。これまで見てきた全体像に自分を重ねてみると、どの投資方法から考え始めるかが見えてきます。

目的・資金・関与度で投資方法の候補を絞る

以下の3項目を整理すると、自分が検討しやすい投資方法を絞り込みやすくなります。

項目  整理のポイント
目的月々の収益か、資産形成か、相続対策か。複数ある場合は優先順位を付ける。
資金投入額と借り入れの有無で、始められる規模が変わる。
関与度運用に直接関わるか、案件を選ぶだけにするか。

3つを同時に考える必要はありません。どの項目から入っても、残りの2つがそこに連動して見えてきます。

目的から見る場合

目的の優先順位が「月々の収入を得たい」に向いている場合、家賃を直接受け取る現物投資が候補に上がります。現物投資は、入居状況や維持管理の積み重ねで収益が動く構造です。
月々の収入を多くしたいほど、投入する資金も大きくなります。家賃収入は物件の規模に比例するため、月5万円の収入を狙うのか、月20万円を狙うのかで、必要な物件価格と資金計画は大きく変わります。
また、実際の収入には、家賃の入り方と、そこから引かれる管理費・修繕費・税金まで見た上で判断することになります。

資金から見る場合

手持ちの資金が数万円単位であれば、REITを毎月積み立てて少しずつ増やしていく形が無理のない入り口になります。REITは証券口座から数千円単位で買付ができるため、小口から積み上げていくことができます。
ただし、この資金規模で「不動産投資で月々の収入を得る」と考えると、現物投資にもクラウドファンディングにも手が届きません。数万円の範囲で無理に不動産投資の形を取るよりは、まず資金を蓄えること自体を目的にしたほうが土台が固まります。
一方で、融資を含めて数千万円規模の資金を動かせるのであれば、現物投資の選択肢が広がります。投入額と借り入れの有無で、選べる物件の規模と、そこから生まれる収益の大きさが変わります。資金が大きく動く分、運用に伴う判断事項も増えていきます。

関与度から見る場合

運用に直接関わるのであれば、現物投資が候補に上がります。最近は管理会社に日常の運営を委託するのが一般的になりつつありますが、修繕のタイミングや賃料設定の判断は自分に残ります。委託コストもかかる分、手元に残る収益は削られます。この場合、目的は月々の収入に向き、資金は物件の規模に応じて大きくなります。
案件を選ぶだけにするのであれば、出資型が候補に上がります。運用そのものは事業者に委ね、目的は分配や償還での資産形成が中心になります。資金も小口から始められます。

目的・資金・関与度は、検討のきっかけを渡すための項目です。この3つを手がかりにすると、これまで見てきた種類と収益のしくみが自分の事情と結びつき、どこから考え始めるかが見えてきます。

編集長のコメント

私は現物不動産を専門にしています。土地を探し、その場所で賃貸経営が成り立つのかを考えながら、収益物件を一から企画する仕事です。
土地が見つかると、周辺を歩きます。近くの賃貸物件を見て、募集状況や家賃帯を調べ、人の流れや生活環境も確認します。そうして集めた情報を重ねながら、その場所で長く賃貸経営ができるのかを考えています。
投資家が買う場面でも同じです。業者から「利回りがいい」「空いてもすぐ埋まります」と案内されても、現地を自分の目で確認するまでは、その数字が実情と合っているかを見極める段階が残っています。自分の足で確認し、競合物件の状況を見て、数字と実情を合わせていく。現物投資だからこそ、自分の目と足で集めた情報が、その後の判断につながっていきます。
投資方法が変われば、見るべきポイントも変わります。現物には現物の専門家がいて、REITや不動産クラウドファンディングなどの出資型には、その分野を専門とする人がいます。

ご自身の投資方法に合う相談相手を見つけてくださいね。

まとめ

  • 現物投資出資型に分かれ、自分で物件を持つか運用に資金を預けるかで関わり方が変わる。
  • 現物は家賃から費用を引いた実態で収益が動き、出資型は分配や償還で返る。同じ利回りでも中身は異なる
  • 目的・資金・関与度を整理して、投資方法の選択に反映させる。

不動産投資には何があるか、どう収益が動くか、自分はどうか。ここを押さえることが、具体的な投資法ごとの検討に進める基礎ができます。

次に読むべき記事

区分マンション投資を始めるということ|I-02
➤ I-04の記事は現在整備中です。公開までしばらくお待ちください。

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この記事を書いた人

PropFP編集長のアバター PropFP編集長 宅建士 × CFP®

不動産業界15年
宅地建物取引士
CFP®(Certified Financial Planner™)

不動産の仕入・新築開発販売・リフォーム再販・投資用仲介・賃貸管理・隣地調整など、実務の川上から川下までを幅広く経験。

「不動産の知識だけでは、お客様を守れない」
その実感から、不動産 × お金 の両側面を正直に伝えるメディアとして PropFPを運営。
不動産の良い面と注意点の両方を踏まえて、落ち着いて判断できる情報を届けています。

■ PropFP = Property(不動産)× Financial Planning(資金計画)

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