募集図面から読み解く初期費用:契約前の基礎知識|HR-02

賃貸物件を探し始めると、まず目に入るのは間取りや家賃です。そこから立地や築年数を見比べながら、いくつもの募集図面に目を通していきます。
条件を並べていく中で、この物件はいくらかかるのかを自分の中で整理したくなる場面も出てきます。募集図面には、そのための情報が載っています。

目 次

結論:募集図面は契約条件の要約となる

物件を借りるにあたって必要になる条件が、あらかじめ整理された形で示されているのが募集図面です。家賃・間取り・立地を見るための資料であると同時に、契約全体を把握するための情報も含まれています。

  • 支払い条件:家賃、管理費など、毎月発生する金額
  • 契約条件:敷金、礼金などの初期費用や契約期間
  • 継続条件:更新料や特約など、入居後も続く約束事項

この3つを押さえて読むと、募集図面は「物件の案内」ではなく、契約内容を事前に確認するための要約資料として読み取れます。

図面の全体を把握する

・図面ごとに情報の並び方は異なる
・項目ごとに担う役割は共通している
・最初に全体を眺めると、確認の順番が定まりやすい

募集図面を開いたら、まず記載内容を一通り目にします。個々の条件を見る前に、どんな情報が載っている資料かを押さえておきます。

図面内に必ずある主要な項目

図面に記載される内容は、大きく分けると役割ごとに整理できます。代表的な情報の種類は次のとおりです。

  • 支払い条件:家賃、管理費、共益費
  • 物件条件:間取り、専有面積、築年数
  • 立地・交通:住所、最寄駅、路線、徒歩分数
  • 契約条件:敷金、礼金、仲介手数料、契約期間
  • 補足事項:備考欄、特約、更新条件、禁止事項 など

この段階では、内容を細かく理解する必要はありません。どの種類の情報が載っているかを確認するところまでで十分です。

募集図面でよく見かけるレイアウト

作成する会社やツールによって情報の配置はそれぞれ異なります。経験上よく目にする募集図面を例に整理します。多くの場合、左右どちらかに条件欄をまとめ、上から「支払い条件 → 契約条件 → 物件情報 → 補足事項」の順で情報が配置されています。中央にかけては、間取り、地図、物件写真など、物件のイメージを確認する情報が配置され、上部に物件名、下部に取り扱い会社の情報が記載されている構成が一般的です。

募集図面は、情報を一覧で確認するための資料です。どこに何が書かれているかを把握できれば、次の確認が進めやすくなります。

支払い条件・契約条件の読み方

・発生する家賃額を取り出す
・契約条件に含まれる金額を別枠で把握する
・最後に合算したものが契約金となる

家賃と初期費用を個別に確認していきます。順番に見ていくことで、どこまでが毎月の支払いで、どこからが契約時の支払いかが整理できます。

毎月の家賃と、入居前後に発生する家賃

募集図面に記載されている家賃や共益費は、入居後に毎月支払う金額であると同時に、日割り計算の基準となる数字でもあります。日割り家賃は、募集図面に金額として記載されることはほとんどありません。実際には、図面に記載されている家賃や共益費をもとに計算されます。

例えば、月額家賃が80,000円の物件に、月の16日から入居する場合、その月の家賃は、16日から月末までの17日分を日割りで計算します。1ヶ月が31日の場合、80,000円 × 17日 ÷ 31日 となります。この日割り分に加えて、翌月分の前家賃として80,000円が請求されるのが一般的です。そしてこの合計が、契約時に支払う家賃として扱われます。

ここで同時に確認しておきたいのが、現在住んでいる住まいの解約条件です。解約予告のタイミングによっては、旧居の家賃と新居の日割り家賃が同じ月に発生する期間が生じます。そのため、新居の募集条件を見る際は、今の契約条件もあわせて確認しておくと、全体の支払いを把握しやすくなります。

契約条件に含まれる金額(初期費用)

家賃とは別に、募集図面には契約時に確定する初期費用が記載されています。これらは毎月の支払いではなく、入居にあたって一度発生する費用です。主な内容は、次のとおりです。

敷金(目安:家賃0〜2ヶ月分)
退去時の原状回復費用などに充てられる預り金。契約内容によっては、一定額があらかじめ償却されるケースもあります。
また、ペット可物件では、敷金が1ヶ月分上乗せされるなど、条件によって金額が変わることがあります。

礼金(目安:家賃0〜2ヶ月分)
契約時に支払う費用で、返還されないのが一般的です。地域や物件によって有無や金額に差があります。

仲介手数料(目安:家賃0.5〜1ヶ月分+消費税)
仲介会社に支払う費用。金額は契約条件や募集形態によって異なります。

保証会社利用料(目安:家賃の30〜60%程度/初回)
現在は、多くの賃貸契約で保証会社の利用が前提になっています。指定された保証会社の審査に通るかどうかで、入居できるかが決まるケースも少なくありません。初回費用として、家賃の一定割合がかかるのが一般的です。

火災保険料(目安:2年で15,000〜25,000円程度)
管理会社指定の保険に加入する場合もあれば、条件を満たせば自分で選んだ保険に加入できるケースもあります。内容次第では、保険料を抑えられることもあります。

これら以外にも、鍵の交換費用や事務手数料、消毒費用などが、初期費用として別途かかることがあります。金額は大きくなく見えても、項目が重なると、契約時の支払い総額は想定より増えがちです。そのため、募集図面に記載されている初期費用は、家賃と合わせて一式で確認しておくことが大切になります。

これらすべてを合算したものが、契約時に必要となる契約金です。

補足事項の読み方

・追加費用になる項目が記載されている
・入居の決め手となる判断材料が含まれている
・契約上の取り扱いが示されている

募集図面の補足事項は、内容と金額だけが書かれている場合もあれば、文字情報で条件がまとめられている場合もあります。物件や取り扱う会社によって記載仕様はさまざまですが、どの募集図面でも、補足事項には契約に関わる情報が備考欄などに集められています。

その他の事項として記載される例

募集図面の備考欄には、家賃や敷金・礼金とは別に、追加の費用が、項目名と金額のセットで簡潔に記載されていることがあります。代表的なものは次のとおりです。

  • 鍵の交換費用
  • 24時間サポートなどの加入費用
  • 事務手数料や各種登録料
  • 室内消毒費や除菌費用
  • 定額の退去時クリーニング費
  • 短期解約時の違約金
  • 町会費、自治会費
  • 駐輪場代、バイク置場代

いずれも、備考欄にまとめて記載されていることが多く、契約金の合計に含める必要があります。その中には、交渉次第で外せる、または条件を調整できる項目が含まれることもあります。

告知事項として記載される例

備考欄に書かれる内容の中には、入居するかどうかを決める前提になる情報が含まれることがあります。物件の過去の経緯や、周辺環境に関する特記事項などがその代表です。金額条件とは別の理由で、検討を続けるかどうかに影響します。これらは、知ったうえで選ぶかどうかが問われる情報です。入居後に調整する性質のものではないため、募集段階で確認する意味を持ちます。

特約事項として記載される例

入居後や退去時の扱いを定める条件が、特約として備考欄に記載されていることがあります。原状回復の考え方や、退去時の精算方法、更新時の手続きなどがその例です。契約時点では、特別な支払いが発生しない場合もあります。しかし、実際の場面では、契約書に基づいてそのまま適用されます。時間が経ってから扱いが明確になる条件として、あらかじめ目を通しておく項目です。

備考欄には、費用・判断材料・契約上の扱いがまとめて記載されています。家賃条件とあわせて、ここまで一通り確認しておくと安心です。

募集図面に関連する最近の動向

募集図面の費用表示が厳格化:2025年8月26日、首都圏不動産公正取引協議会は「新 景品規約」を施行し、賃貸広告における費用表示のルールを厳格化しました。背景には、募集図面に記載のない費用が、契約段階で追加される事例が相次いでいたことがあります。

この動きを受け、消費者庁と不動産業界が連携し、表示内容に対する監視が強化されています。2025年10月には、インターネット賃貸広告を対象とした一斉調査が実施され、「費用の説明不足」や「おとり広告」に関する違反事例が公表されました。

今後は、募集図面に記載されていない費用を契約時に追加する行為が、より厳しくチェックされる状況になります。そのため、不動産会社側は費用の明示に慎重になり、結果として備考欄に条件や費用が集約される傾向が強まっています。

編集長のコメント

募集図面を見ていると、あって欲しい条件と、表には出てこない条件があります。

借主側から見て分かりやすい、あって欲しい条件はフリーレント(FR)です。よく「FR ○ヵ月」と書かれている物件は、募集段階から、それをセールスポイントとして使っています。一定期間、家賃の支払いが免除される仕組みで、入居初期の負担を下げたい場面では、素直にありがたい条件です。

引っ越しが重なったときや、出費が集中するタイミングでは、家賃という固定費を一時的に外せる効果が、そのまま出ます。期間や付帯条件を整理したうえで使えば、家計を組み立てる側にとって、現実的な助けになります。

一方で、募集図面には書かれない条件もあります。広告料(AD)です。これは、貸主側から仲介会社などに支払われるもので、借主の向けの記載として表に出ることのない情報です。

このADが設定されているケースでは、仲介手数料や礼金について、価格調整の話ができる場合があります。これを分かっていると、物件相談の際、会話の流れで「この物件にADは出ていますか?」と一度聞いてみる、という選択肢がとれます。

調整を受けるのは仲介会社側なので、聞いたからといって、必ず条件が変わるわけではありませんが、確認したうえで選ぶかどうかで、条件の受け止め方は変わります。

募集図面は、家賃や間取りだけを見るための資料ではありません。書いてある条件と、聞いて初めて分かる事情が、同じ一枚の中に重なっています。

「こう見ていくと、業者が何を見ているかも、少し分かってきませんか?」

まとめ

  • 募集図面は、家賃や間取りだけでなく、支払い条件・契約条件・補足事項までを含めた資料
  • 初期費用や契約金は、月額・一時金・補足欄の項目を分けて拾い、最後に合算する
  • 備考欄には、金額や扱いに影響する条件がまとめて書かれている。

募集図面を一枚通して読むことで、契約前に整理できることが増えます。

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この記事を書いた人

PropFP編集長のアバター PropFP編集長 宅建士 × CFP®

不動産業界15年
宅地建物取引士
CFP®(Certified Financial Planner™)

不動産の仕入・新築開発販売・リフォーム再販・投資用仲介・賃貸管理・隣地調整など、実務の川上から川下までを幅広く経験。

「不動産の知識だけでは、お客様を守れない」
その実感から、不動産 × お金 の両側面を正直に伝えるメディアとして PropFPを運営。
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